どこにでも当てはまる文
「あなたは他人に認められたいと思う一方、自分には厳しいところがあります」。こういう文を読むと、ほとんどの人が自分の話だと感じます。多くの人にある程度当てはまるからです。占いや性格の結果は、こうした文で埋められているため、どんな結果を受け取っても当たっているように読めます。
誰にでも当てはまる文がなぜ自分の話に読めるのか。最初の実験、肯定的な内容が通りやすい理由、当たった記憶だけが残る仕組み、自分で確かめる方法を整理しました。
「あなたは他人に認められたいと思う一方、自分には厳しいところがあります」。こういう文を読むと、ほとんどの人が自分の話だと感じます。多くの人にある程度当てはまるからです。占いや性格の結果は、こうした文で埋められているため、どんな結果を受け取っても当たっているように読めます。
この現象は、一九四〇年代の終わりにアメリカの心理学者バートラム・フォアラーが授業で行った実験で広く知られるようになりました。学生に性格検査を受けさせたあと、一人ひとりに個人の結果だとして説明文を配りましたが、実際には全員が同じ文章でした。それでも学生の多くは、その説明が自分をかなり正確に言い当てていると評価しました。そのためこの現象はフォアラー効果とも呼ばれます。バーナムという名前は、誰にでも楽しめるものを用意する興行で有名だった十九世紀アメリカの興行師バーナムに由来します。
同じ文でも「あなたのためだけに分析した結果」と言われると、ずっとよく当たっていると感じます。生年月日や名前を入力させる過程があると効果は大きくなります。実際には入力した値に関係なく同じ文が出るとしても、個人向けの手順を経たと信じるだけで結果はより正確に感じられます。
結果の文はおおむね良いほうに書かれています。人は自分についての肯定的な記述のほうを受け入れやすいからです。「頑固で人の話を聞かない」より「自分の考えがはっきりしている」のほうがずっと当たっていると感じますが、この二つは同じ傾向を別の書き方にしたものです。 短所が混ざっていても、「ときには」「たまに」といった言葉でやわらかく包めば、人はそれさえ自分の話として受け入れます。少しの短所はかえって結果をもっともらしく見せ、ほめ言葉を並べただけではないという印象を与えることもあります。
結果に10の文があれば、そのうち当たった3つが記憶に残り、残りは流れていきます。この選択的な記憶のため、時間がたつほど「あのテストは本当によく当たった」という印象だけが残ります。予言や占いも同じやり方で的中率がふくらみます。
結果が本当に自分を説明しているのか気になるなら、簡単に試せます。要は、結果の文章が自分だけに当てはまるのか、誰にでも貼り付けられるのかを見分けることです。やってみると、思った以上に多くの文章が誰にでも当てはまることに気づきます。
この仕組みは占いだけのものではありません。あなたへのおすすめと書かれた広告の文句、性格タイプ別の恋愛アドバイス、「こんな人はぜひ見て」といった動画の題名も、多くの人に同時に当てはまるように書かれています。コールドリーディングと呼ばれる話術も似た原理を使います。相手について何も知らない状態で大多数に当てはまる言葉を投げかけ、反応を見ながら当たった方向へ話を絞っていくやり方です。相手に見透かされているように感じたら、その人が実際に具体的な情報を言ったのか、自分が空白を埋めたのかを思い返すと見分けがつきます。
この仕組みを知ったからといって、占いやテストがつまらなくなるわけではありません。むしろどの文がなぜよく当たるように感じるのかが見えると、別の楽しみ方ができます。問題は楽しむことではなく、重要な決定の根拠に使うことです。結果が自分について語ったのではなく、自分がその文に自分を当てはめたのだ、という点だけ覚えておけば十分です。 占いやネットのテスト結果は、心理検査でも診断でもありません。とくにお金のかかる決定、人についての判断、進路のように取り返しにくい選択では、結果から一歩引いて読む習慣が役に立ちます。